かびるんるんの備忘録

データサイエンスに興味をもっている学生です。卒論を書いたりデータ分析のインターンをしたりしています。

コトラー『マーケティング・マネジメント』のエッセンス[Ⅰ]

(https://www.amazon.co.jp/dp/4621066161/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_U_asdKEb3G439P3)

「21世紀のマーケティングの定義」

マーケティングの範囲(P6~P18)

マーケティングとは何か

アメリカ・マーケティング教会(AMA)定義によると、マーケティングは次のように定義される。

「顧客に向けて価値を創造、伝達、提供し、組織及び組織を取り巻くステークホルダーに有益になるように顧客との関係性をマネジメントする組織の機能及びプロセス」

価値をもたらす製品を顧客が手に入れる方法の中では、「交換」がマーケの中核をにになるコンセプトである。この交換が成立するためには、次の条件が整っている必要がある。
1. 少なくとも2つのグループが存在する。
2. それぞれのグループが他方にとって価値がありそうなものを持っている。
3. それぞれのグループが、コミュニケーションと受け渡しができる。
4. それぞれのグループが、自由に交換の申し入れを受け入れたり拒否したりできる。
5. それぞれのグループが、他方と取引することが適切で好ましいと信じている。

交換とは、実際に成立するかどうかが「それぞれのグループが以前よりも良い状態になる条件に合意できるかどうか」に左右される価値創造のプロセスである。この交換を成功させるため、マーケターはそれぞれのグループが取引に何を期待しているのかを分析して明確化する必要がある。

誰がマーケティングをするのか

マーケターとは、見込み客と呼ばれる他社からの反応(注目、購買、投票、寄付)を求めている人のことである。マーケターの役割は、ただ自社製品の需要を刺激するだけではなく、生産とロジスティクスの専門家が供給管理の責任を背負っているように、需要管理全般に責任を負うことにある。つまり、組織の目的に叶うように需要の水準、タイミング、性質を調整することがマーケターの仕事だと言える。

ここで、需要を8つの状態に分解したものを列挙する。いずれの場合にもマーケターはその需要の状態の背後にある原因を見つけて、需要を望ましい状態に移行させるための行動計画を立てなければならない。

  • 消極的需要:消費者が製品を好まず、それを避けるための代価すら払いうる。
  • ゼロ需要:消費者が製品の存在すら知らないか、興味がない。
  • 潜在的需要:消費者が既存製品では満たされない強いニーズを共有している。
  • 需要減少:消費者が購入する頻度を減らしたり、全く購入しなくなる。
  • 不規則な需要:消費者の購入が季節、月、週、日、時間によって異なる。
  • 十分な需要:消費者が市場に出た全ての商品をちょうど良い具合に購入する。
  • 需要過剰:需要に製品の供給が追いつかない。
  • 不健全な需要:社会的に望ましくない結果をもたらす製品に消費者が引き付けられる。

市場に対する企業の方針(P19~P30)

企業がマーケティング活動を進める際に従うコンセプトには、相容れない次の5つがある。

生産コンセプト

どこでも入手可能で価格が手ごろな製品を消費者は好むという考えに基づく、最も古いビジネスコンセプトの一つ。経営者は、コストを下げ大量に製品を流通させることに専念。発展途上国や、市場を広げたい企業に取り入れられる。

製品コンセプト

品質や性能が最高であったり、革新的な特徴のある製品が消費者に好まれるという考え方。ただし、適正な価格設定、流通、広告、販売をしなければ、改良品や新製品であっても成功するとは限らないことに注意。

販売コンセプト

企業が何もしなければ消費者や企業は製品を買ってくれないという考えのもと、精力的に販売とプロモーションを行う。保険、百科事典、墓地などの非探索財において積極的に実施される。市場が求めるものを生産するよりも、生産した製品を売ることを目的に据える。売り込み攻勢に頼ったマーケには、返品や悪評、消費者センターへの苦情などのリスクが伴うことに注意。

マーケティング・コンセプト

選択した標的市場に対して競合他社よりも効果的に顧客価値を生み出し、供給し、コミュニケーションすることが企業目標を達成するための鍵になる、という1950年半ばに生まれた考え方。これによってビジネスは製品志向の「市場に出して売る」から顧客志向の「感じ取って応じる」方針に移行した。また、顕在化した顧客ニーズを理解して対応する場合を「受動型市場志向」、調査や推測によって顧客の潜在的なニーズに注目する場合を「能動型市場志向」、両方を実践する場合を「総合型市場志向」といって区別することができる。

ホリスティック・マーケティング・コンセプト

マーケティングのプログラム、プロセス、活動それぞれの幅と相互依存性を認識した上で、それらを開発して実行することをいう。つまり、幅広く統一感のある視点からマーケティング活動の範囲と複雑性を認識し融和させようとするアプローチであると言える。次に示す4つの構成要素で成り立っている。

f:id:kabirunrunML:20200413231159p:plain
ホリスティック・マーケティングの次元(本書P23より抜粋)

  1. リレイションシップ・マーケティング
    企業とそれを支えるステークホルダー(顧客、従業員、供給業者、流通業者、小売業者、広告会社、その他)で構成されるマーケティング・ネットワークにおいて長期的に良好な関係を築くことを狙いとする。強力な関係を作り上げるためには、グループ毎のケイパビリティと資源、ニーズ、要望、目標を理解する必要がある。今日では、過去の取引やデモグラグラフィックス、サイコグラフィックス、媒体、流通の選好に関する情報から、個別の顧客毎に製品やサービス、メッセージを作る企業が増えている。

  2. 統合型マーケティング
    主要テーマは「①価値を伝達し提供するために多彩なマーケティング活用をすること」と、「②全てのマーケティング活動をうまく連携させてジョイント効果を最大化すること」である。「4つのP」で構成されるマーケティングミックスというツールをうまく活用することで、消費者に向けて価値を創造し、伝達し、提供するための完全に統合されたマーケティングプログラムをマーケターは作る必要がある。その結果、経済性と利便性において顧客ニーズに応え、効果的にコミュニケーションできる企業が成功するのである(「4つのC」)。

    「4つのP」... Product, Price, Place, Promotion
    「4つのC」... Customer solution, Customer cost, Convenience, Communication

  3. インターナル・マーケティング
    組織内の全ての人、特に経営幹部に適切なマーケティング原理を理解させること。 これには次に示す二つの条件がある。
    ①セールス・フォース、広告、カスタマーサービス、製品マネジメント、マーケティングリサーチなど様々なマーケ 機能を担う部門が顧客の視点から連携して協力し合うこと。
    ②そうでない他の部門もマーケ活動に取り組むこと。一部門だけでなく、社内全体にマーケティング思考が行き渡っていることが重要である。

  4. 社会的責任マーケティング
    企業と顧客だけでなく社会全体に影響を与えるマーケ活動を、倫理、環境、法、社会的文脈で理解し、社会福祉に関連して自分たちの役割を慎重に考慮すること。このような取り組みは、自社の評判を高めブランドの認知度と顧客ロイヤリティをあげ、最終的に売り上げやメディア露出を伸ばすことに繋がる(cf. ソサイエタル・マーケティング・コンセプト...企業の役割は標的市場のニーズ、欲求、利益を正しく判断し、消費者と社会の幸福を維持・向上させるやり方で要望に沿う満足を競合他社よりも効率的かつ効果的に提供するという考え方)。